周知の事実を冒頭から書くのだが“気温”は洋服を着る上で考慮せざる得ない。
まあ洋服に限らず真夏に雪合戦はできないし凍える冬にかき氷は頭痛の素でしかない。
なぜこの様な話か説明すると、6月頭にこの文章を書いているのだが如何せん気温が定まら無い。
日中外を歩いていたら汗をかいてしまう気候だが日が落ちると羽織ものが無いと肌寒い。
（ただお店近くに多くの海外の方が宿泊しているホテルがあるのだが、大体みんな一日中半袖半パンでタフなんだなと感心している。）
ファッションを楽しむ人の多くは夏が苦手なイメージだ。
真夏の暑い日は物理的に着れる洋服の数は少なくなる＝ファッションを楽しみにくいだろうし、僕自身もやはり例に漏れずそう思う。
そんな一日を通し気温が左右してしまう今、僕の気分はシャツだ。
まだ半袖を着たく無いというお客様の声も多いし、ただアウターを買う気分になれないのもわかる。
シャツは良い。メンズウェアでは言うまでも無く定番のアイテムだし、カジュアル過ぎる服装が苦手な僕にとっては襟が付いてクラシックな佇まいに背筋を伸ばされる感じがする。
（最近僕はシャツばかり買っている。むしろシャツしか買ってない…）
ただTHE ELEPHANTに来てくれる皆にクラシック過ぎる物を提案したいとは思わない。やはりどこか違和感を持ちたいだろうなと。
その点MARINA YEEのシャツは今の気分に合うだろう。
MARINA YEEはベルギーのファッションブランドで、彼女を語る上で外せないのがアントワープ王立芸術アカデミーの伝説Antwerp Sixだろう。
Dries Van NotenやAnn Demeulemeester、Walter Van Beirendonckが有名だろうがその内の一人だ。
（ここら辺は沢山の文献が残っているし知ってる方も多いだろう。）
彼女はずっとファッション業界にいたわけでは無く、実際今の様にコレクションを発表したのは2018年の事。
ただ業界を離れている間も娘の為に洋服を作ってたり、コーヒーショップを運営するなどアクティブな方だ。
そんな彼女は何かに問わられる事なく自由に洋服を作っている。
今回THE ELEPHANTでは二型のシャツを選んだ。
一つ目は
M .Y. SHIRT 5 OVERSIZED "ORIGAMI" SHIRT
見ての通り大胆なストライプは等間隔では無いもののロンドンストライプの様な青×白で引かれ見る人に爽やかな印象を与える。
ただ”爽やか”の一言で片付く物ではなくシャツ自体の独特のパターンがアンチクラシックを彷彿とさせる。
商品名にも記載されている”ORIGAMI”
無論日本の”折紙”から着想を得ており、このシャツで言えばフロントの生地と生地を折紙の様に折り縫い合わせMARINA YEEでしか成し得ないシルエットを作り出している。
リラックスした肩の落ち具合と長い着丈のオーバーサイズシャツだが太目のカフスがしっかりと手首で止まりカジュアルになり過ぎない。
僕自身最も好きな柄がストライプというのも相まって今回の買付にあたりどうしても店頭に置きたかった1着だ。
二つ目は
M .Y. SHIRT 1 OVERSIZED SHIRT
こちらはほのかに光沢感のある黒色でボタンも黒で統一されよりシックで静かな印象だ。
一番の魅力はなんと言ってもカフスだろう。
広く取られた袖口はまるでポンチョの様に手の甲を覆いミステリアスなイメージ。
アシンメトリーに配置された袖口のボタンで自由な着方ができる点もMARINA YEEらしいなと感心する。
先ほどのストライプとは真逆だが他をシンプルに留めており纏まっている。
黒いシャツ。夏に着る黒は一見暑苦しい印象があるかも知れないが、滑らかなCOTTON 100%の生地に袖を通せばきっと気温が高くなっても着用したいなと思うだろう。
（実はオーナーの折見さんも所有している1着だ。）
色や柄、ディテールも異なる2着だがそれぞれにしか表現できないアンチテーゼがこもっているシャツ。勿論クラシックな要素はあるのだがこの捻られた洋服は今までのシャツの概念を壊してくれるに違いない。
今からの季節1枚で着るのも良し、羽織として使い暑くなれば腰に巻いても良い。
MARINA YEEの自由な洋服を自由に着るから意味があるのだと思う。
2着とも大阪店にあるので袖を通しに来てください。
福原幹二
